肛門衛生(anal hygiene)とは聞き馴れない言葉ですが、これは肛門の病気を予防し、また悪化させないためのひとつの方法なのです。
特に欧米に多い肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)という肛門が非常にかゆい病気の治療に取り入れられて効果をあげておりますが、この方法は単に肛門掻痒症だけでなく、その他の肛門の病気の予防に応用することができるのです。それでは肛門衛生とはどのような方法なのでしょうか。順を追って説明してみます。


1 便通の調整
便秘や下痢が続きますと、いぼ痔やきれ痔などの原因となりますので、できるだけ便通を整えることが必要です。それには規則正しい食事と排便の習慣をつけるようにします。食事は肉食が多い場合便秘になりがちですので、肉類をと同時に必ず野菜を食べるようにしましょう。食事療法で調整ができない場合は、下剤や整腸剤を使います

2 肛門周囲の清潔
「肛門をきれいにしなさい」という話をしますと、石鹸や消毒薬でごしごしこする患者さんを時々みかけますが、肛門のまわりの皮膚は非常に敏感で、たとえばくちびるの組織と同じようなものですから、石鹸や消毒薬のような化学的刺激や、ごしごしこする物理的刺激には弱く、すぐにただれたり切れたりします。トイレットペーパーで強く拭うのもよくありません。

このような強い刺激を加えずに肛門をきれいにする方法としては何も加えない水か、ぬるま湯で軽く洗うのが最もよいでしょう。しかし永い間入浴できなかったとき、または外出先で排便した時や分泌物で汚れた場合、洗浄装置付き便器のある便所以外は洗うことが困難ですので、携帯用の簡単で丈夫な洗浄器を使用することは肛門衛生上必要であると思われます。洗った後には柔らかい紙で押すようにして水分を取り、通気性のよい清潔な下着を着けます。この下着もなるべくナイロン製は避け、木綿のものがよいでしょう。

3 入浴と運動
入浴することにより肛門のまわりから骨盤の中の血液の循環がよくなり、うっ血が取れて特に痔核に対して有効です。シャワーだけでは十分ではありませんので全身浴がよいでしょう。他の病気で入浴を禁じられていない限り、できるだけ毎日入浴して下さい。温泉を利用するのもよいのですが、刺激の強くない単純泉が適当と思います。

好きな運動は続けることにより、下半身の血液循環をよくしますので効果があると考えますが、極端に腹圧をかけるウエイトリフテイングなどはお勧めできません。水泳もよいのですが、休憩の時に冷たいプールサイドに長く坐ることは避けましょう。運動が嫌い、またはできない場合は朝夕30分ぐらいの散歩をお勧めします。

4 刺激物やアルコール類の摂取を避ける
わさび、しょうが、こしょう、とうがらしなどの刺激性食品は身体を暖めると言いますが、肛門の部分に対してはうっ血を起こしやすく、特にいぼ痔や切れ痔を起こしやすくなると思われますので、なるべくひかえめにし、薬味程度にして下さい。
またアルコール類もうっ血を起こしやすいので注意しましょう。とうがらしを使った料理を肴にしてアルコールを飲んだ次の日に、激しい肛門の腫れと痛みを訴えてきた患者さんを時々診察することがあります。

5 肛門にうっ血を起こすような刺激を避ける
長時間坐ることや車の運転などは肛門部にうっ血を起こしやすいので、時々休憩するようにします。できれば休むときは横になった方がよいでしょう。

6 異常を感じたならば専門医へ
以上のような注意をしていても、万一肛門に異常を感じたならば早めに専門医の診察を受けましょう。昔は痔の病気といえばすぐに手術をされてしまったのですが、現在はほとんどが薬やその他の方法で治療することができます。診察も痛くなく安心して受けられますので、恥ずかしいからといって一日延ばしにせずに病院へ行って下さい。

Copyright (C) 2002 Spuler-Japan.Co.,LTD. All Rights Reserved. 有限会社シュピューラージャパン